2024年10月29日の「中部電力浜岡原子力発電所」見学会に、朴 恵淑三重大学地域イノベーション学研究科客員教授・「三重GPN」代表幹事(会長)と安部大樹三重大学人文学部特任助教・「三重GPN」事務局メンバーが参加しました。
日本は、2021年に、エネルギー政策の基本的な方向性を示す「第6次エネルギー基本計画」を策定し、エネルギー資源に乏しい日本は、安全性(Safety)を大前提に、環境保全(Environment)・安定供給(Energy Security)・経済性(Economic Efficiency)を同時に達成する「S + 3E」を基本方針に、エネルギー政策を進めています。日本は、「S + 3E」の達成のために、各エネルギーごとの強みを発揮し、弱みを補完するバランスの取れた「エネルギーミックス」の実現を目指しています。2030年までに、国の目指す電源構成は、石炭・石油発電21%程度、天然ガス発電20%程度、原子力発電20−22%程度、再生可能エネルギー発電36−38%程度、水素・アンモニア発電1%程度を目指しています。
中部電力(株)は、電力の安定供給を目的に高度経済成長期の電力需要増大などに対応する研究開発を行なっており、電力品質の向上に加え、2000年の電力小売り自由化に伴い、省エネや電化などの研究開発を進めています。現在では、新たな価値の創出(CSV)を目的として、2022年に「7つの重点分野」を設定し、脱炭素社会の実現及び客の快適性や利便性に対するニーズを先行する技術研究開発を加速しています。
「中部電力浜岡原子力発電所」見学会は、2011年の東日本大震災による福島第1原子力発電所の事故の経験を活かした、浜岡原子力発電所における安全対策について説明を受け、浜岡原子力発電所の内外の設備一部の見学を行いました。
(1) 地震に備える
耐震裕度向上工事、配管・電路類のサポート工事、地盤の強度改良工事、軽油タンクの地下化(火災・竜巻対策)
(2) 津波に備える
防波壁/敷地東西盛土、津波対策(強化扉・水密扉)、取水槽から敷地内への海水流入を防止する壁
(3) 冷却機能の確保
「電源設備」緊急時ガスタービン発電機、電源車
「注水機能」ポンプ車、緊急時淡水貯槽
「除熱機能」緊急時海水取水設備
(4) 格納容器の破損を防ぐ
原子炉ウェル注水系、格納容器下部注水系、フィルタベント設備
(5) 原子炉建屋の破損を防ぐ
原子炉建屋ベント、放水砲
原子力発電は、ウランの核分裂による熱を利用しています。この熱で水を沸かし、その蒸気の力でタービンを回転させることで、発電機で電気をつくります。
近年の地球温暖化による気候危機に伴うエネルギー危機への対策となる、エネルギーミックスの成功において、二酸化炭素をはじめ、温室効果ガス排出の実質ゼロを目指す、2050年の脱炭素(カーボンニュートラル)社会創生の戦略および成功的実施が最も求められています。
日本を含む世界各国は、2015年12月の国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)において「パリ協定(Paris Agreement)」の採択、2021年11月の国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)での「グラスゴー気候合意;Glasgow Climate Pact」、2022年11月の国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)での「シャルムエルシェイク実施計画(Sharm el Sheikh Implementation; Loss and Damage)」、2023年11月の国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)での「UAE 合意文書(The UAE Consensus)」に合意し、気候危機によるエネルギー危機の顕在化が懸念されることから化石燃料からの脱却が必要不可欠となり、2030年の国連持続可能な開発目標(SDGs)の達成、2050年の脱炭素(カーボンニュートラル)社会創生に向けて、世界各国の叡智を集め、世界が一丸となって取り組むことが求められています。
「三重GPN」は、環境・SDGs・持続可能な循環型社会(サーキュラーエコノミー)および脱炭素(カーボンニュートラル)社会創生のための研修会・講演会などを開催するのと同時に、気候危機とエネルギー危機への賢明な対応について、中部電力(株)をはじめ、産官学民との緊密な連携によるエネルギー関連施設への見学会の実施など、持続可能な三重社会創生のプラットフォームとしての役割を充実に果たします。その一環として、2025年1月には「中部電力浜岡原子力発電所」見学会を実施予定であり、「三重GPN」会員の多くの参加を期待しています。